リップクリーム

ほんのささいなことだった
リップクリームを手に取った瞬間
そのリップクリームに詰まっていた
苦しかった記憶たちが
一気にフラッシュバックした。

あの日、鏡に映っていた
このリップクリーム。

もう唇は潤いきっていたのに
それに気付いていながらも
一人虚ろに
鏡に映る自分を見つめながら
おもむろにリップクリームを塗り続けた
あの日のこと

忘れようとしていた
あの日のこと

そのリップクリームに
手が触れた瞬間
一気にフラッシュバックした

この記憶が無くなれば
どれだけ幸せなのかな。

written by iHatenaSync